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東京高等裁判所 昭和41年(ネ)2626号 判決 1968年3月29日

被控訴人 東京西南信用組合

理由

一  控訴人ら(日下部米蔵を含む)が被控訴人組合の組合員であることは当事者間に争いがない。

二  (控訴人高木操の借受分について)

控訴人高木操の関係部分についてはその成立に争いがなく、控訴人丸野誠の関係部分については同控訴人本人尋問の結果(原審第一回及び当審)により成立を認めうる甲第一号証(なお同号証の作成年月日は原審における右控訴人本人の第二回尋問の結果および成立に争いのない甲第十四号証により昭和三十二年十二月十八日頃と認められる)によれば、控訴人高木は右同日頃被控訴人との間にすでに成立し、また将来成立すべき一切の取引上の債務につき遅延損害金の率を日歩九銭とする等の取引約定をし、控訴人丸野誠はその債務につき連帯保証をした事実が認められる。原審(第一回)および当審における控訴人高木本人は右甲第一号証の作成に関与しないと供述し、原審(第一回)および当審における控訴人丸野誠本人も同号証の作成はすべて自分がやつたもので、高木操は関知していないと供述するけれども、上記のように甲第一号証の成立に争いのない事実に徴し、右控訴人本人らの供述は採用しがたい。そして、控訴人高木が被控訴人からその主張のように金八万円を借り受けた事実は、同控訴人の自認するところであるから、控訴人丸野誠も連帯保証人として控訴人高木と連帯してその責に任ずべきことは明らかである。同控訴人は右の債務については被控訴人の集金事務を取り扱つていた訴外山田章に弁済したと主張し、原審(第一、二回)および当審における同控訴人本人はその旨の供述をし、当審証人杉本太郎もその旨聞知したかのように供述するけれども、それらの供述は原審証人野中堅太郎ならびに原審および当審(いずれも第一、二回)証人新川成久の各証言に照らし信用しがたく、他に弁済の事実を認むべき適確な証拠はない。

三  (日下部米蔵の借受分について)

日下部米蔵が被控訴人との間にその主張のようにすでに成立しまた将来成立すべき一切の取引上の債務につき遅延損害金の率を日歩八銭とする等の取引約定をし、これにもとづき昭和三十三年二月十九日金五十万円を弁済期同年四月十九日と定めて借り受けたものと認むべき明確な証拠はない。控訴人丸野誠の作成部分につき成立に争いのない甲第二号証ならびに原審(第一回)および当審における同控訴人本人尋問の結果によれば、右の取引はすべて同控訴人が米蔵の名においてなし、かつ自ら連帯保証をしたものである事実が認められる。しかしながら同控訴人が右のように米蔵の名において被控訴人との間に取引約定をして金員を借り受けたのは、同控訴人らが読売名画興業株式会社の設立を企図し、その設立または運営の資金とするためであつて、同会社の設立については米蔵も協力して発起人となり、その子である控訴人日下部守をその取締役とし、そのために自己の印章を控訴人丸野誠の求めによりなん回かにわたり同控訴人に預けていることは、原審(第一回)および当審における同控訴人本人尋問の結果により明らかであり、また、米蔵が同控訴人の妻である控訴人丸野怜子の実父であつて、控訴人丸野誠に対して自己の印章を貸与するにあたつては、前記会社の経営する劇場等の運営資金の入手に必要であると告げられたこともあることは、原審(第一回)における同控訴人本人尋問の結果によりこれを認めることができるから、以上の事実を総合すれば、米蔵は控訴人丸野誠に対し同会社の設立および運営上の資金を入手するに必要な行為につき広汎な代理権を与えたものであつて、同控訴人が前示のごとく被控訴人との間に米蔵の名において取引約定を結び、これにもとづき金五十万円を借り受けたのも、もとよりその代理権の範囲内の行為に属するものと認めるを相当とする。以上認定の事実に抵触する原審(第一回)および当審における控訴人丸野誠、原審における日下部ハツの各本人尋問の結果の部分は信用せず、他に右の認定を覆すべき証拠はない。しからば、右米蔵の債務につき控訴人丸野誠は連帯保証をしたものというのほかなく、同控訴人も米蔵と連帯してその債務につき責に任ずべきである。

米蔵が昭和三八年六月二二日死亡し、控訴人日下部至、三浦スミエ、丸野怜子、日下部守、日下部亘、日下部充、日下部昇および日下部勝郎がそれぞれ十二分の一、日下部ハツが三分の一の各割合で米蔵の権利義務を相続により承継したことは、同控訴人らの明らかに争わないところである。

四  (控訴人丸野誠の借受分について)

控訴人丸野誠が被控訴人との間にその主張のようにすでに成立しまた将来成立すべき一切の取引上の債務につき遅延損害金の率を日歩八銭とする等の取引約定をし、これにもとづき被控訴人主張のように、

(イ)  昭和三三年三月五日金百万円を弁済期同年五月三日

(ロ)  同年三月十三日金八〇万円を弁済期同年五月十二日(一部弁済により残額は金二十五万円となる)

(ハ)  同年一一月十五日金七十万円を弁済期同日

(ニ)  昭和三五年四月二日金四〇万円を弁済期翌三六年五月三十一日

(ホ)  昭和三五年九月六日金五〇万円を弁済期同年十月五日

(ヘ)  同年十月七日金四九万円を弁済期同月二十六日

と定めて借り受けた事実は、右の当事者間に争いがない。しかし、右の債務につき控訴人高木、丸野怜子および日下部米蔵が連帯保証をした事実についてはこれを認むべき明確な証拠はない。原審(第一回)および当審における控訴人丸野誠本人尋問の結果およびこれにより同控訴人の作成部分につき成立を認めうる甲第三号証によれば、前示取引約定の締結に際し被控訴人に差し入れられた取引約定書(甲第三号証)における控訴人高木、丸野怜子および日下部米蔵の連帯保証人としての記名押印は、控訴人丸野誠によつてなされたものであることは明らかである。しかしながら、同控訴人が前示のように被控訴人と取引約定をして金員を借り受けたのは、前項の取引の場合と同様に同控訴人が読売名画興業株式会社の設立または運営の資金に供するためであることは、原審(第一回)および当審における同控訴人本人尋問の結果により明らかであり、米蔵が同会社の設立または運営上の資金を入手するに必要な行為につき同控訴人に広汎な代理権を与えたものと認むべきことは、すでに前項で説示したとおりである。控訴人高木が右会社の監査役であることは成立を認むべき甲第二〇号証によつて明白であり、原審(第一回)および当審における控訴人丸野誠本人尋問の結果によれば、同控訴人は控訴人高木から右会社の設立および運営のためなん回も印章を借り、その際同控訴人に右会社の運営資金の入手に必要であると告げたこともあることが認められる。のみならず、前記二で判示したとおり控訴人丸野誠は控訴人高木の債務につき連帯保証をし、また、成立に争いのない甲第一四号証および原審(第一、二回)における控訴人高木本人尋問の結果によれば、控訴人高木は控訴人丸野誠が昭和三二年一二月一八日被控訴人から控訴人高木の名において金五〇万円を借り受けた際もこれを承認しその約定書を作成するについて控訴人丸野誠に対し一切を任かせている。すなわち、右の両控訴人は相互に被控訴人に対する債務を保証している関係なのである。以上の事実関係と原審証人野中堅太郎の証言とを総合すれば、控訴人丸野誠と被控訴人との取引約定書(甲第三号証)に同控訴人が控訴人高木の記名押印をしたのは同人の了承の下にしたものであつて、同人は右の約定にもとづく控訴人丸野誠の債務につき連帯保証人としての責を免れないと認めるのが相当である。控訴人丸野怜子は前述のごとく控訴人丸野誠の妻であり、原審における控訴人丸野怜子本人尋問の結果によれば、同控訴人は自己の印章を夫誠が持出していたことおよび誠が前記読売名画興業株式会社のためどこか銀行から金を借りたことを知つていたことが認められるから、控訴人怜子は夫誠が金融をうるため自己の印章を使用することを了承していたものと認めるのが相当であり、したがつて、控訴人誠が前記約定書(甲第三号証)に連帯保証人として控訴人怜子の記名押印をしたのも同人の了解の下でしたものというべく、同控訴人は右の約定にもとづく夫誠の債務につき連帯保証人としての責を免れないものといわなければならない。以上認定の事実に抵触する原審(第一、二回)および当審における控訴人丸野誠、高木操、原審における控訴人丸野怜子、日下部ハツ各本人尋問の結果の部分は採用せず、他に右の認定を覆すに足る証拠は存しない。

日下部米蔵の死亡による相続の関係は前認定のとおりである。

五  以上により、被控訴人の本訴請求を認容した原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条第九五条を適用し、主文のとおり判決する。

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